従来のプロセスやシステムに縛られない新興のスタートアップ企業であろうと、確立した大手企業であろうと、大半の医療機器企業は「紙は完璧ではなく非効率で、エラー防止プロセスも不十分」だと認識しています。生産状況などのタイムリーな情報は提供されません。さらに、ほとんどの企業は、紙のコンプライアンスのリスクを認識しています。
電子機器履歴簿 (eDHR) は、製造実行システム (MES) 内のペーパーレスの電子システムです。生産プロセスを強化して、製造完了時の生産記録の情報をすべて取得します。eDHRは、毎回一貫した製品品質を生み出すために必要な、エラー防止とリアルタイムの可視性を提供します。製造中または出荷後に製品品質に問題が生じた場合、eDHRは、疑わしい製品を素早く抑制し、適切な措置を講じて問題を解決します。eDHRに保存された電子記録は、MD&D企業が生産プロセスを最適化する際に役立つ情報を提供します。
電子機器履歴簿 (eDHR) は、製造に関連する情報を収集します。eDHRは、紙のDHRを単に電子形式に変換したり、紙の文書をデジタルでスキャンしてスマートPDFファイルにしたりする「paper-on-glass」と混同されがちです。eDHRの真の価値は、単なる「paper-on-glass」ではなく、製造現場での確実な実行とミス防止を実現し、オペレーションをリアルタイムで正確に可視化する点です。
eDHRシステムが品質、効率、トレーサビリティに与える影響
eDHRシステムは、エラー防止のプロセスを実現し、製造オペレーションをリアルタイムに可視化して、トレーサビリティを提供します。MD&Dメーカーは、eDHRを使用してオペレーターの日常作業をガイドし、トレーニング記録が最新であること、機器が適格であること、正しい材料が使用されていること、すべてのデータが取得されていること、署名が記録されていることを確実にします。eDHRは、コンポーネントの混合や文書化の誤りなどの生産ミスを排除します。
eDHRは、テストの値や結果を取得したり、実際のコンポーネントをバーコードでスキャンしたりすることで、製造プロセスの各ポイントでデータを取得し、ミスがあった場合には警告を発します。多くのケースで、eDHRは人為的なエラーや機械的なエラーを防止できます。製品品質イベントが発生すると、eDHRは疑わしい製品の「抑制管理」に即座に対応します。影響を受ける製品は、生産中であっても稼働中であっても特定され、適切なアクションが実行されます。たとえば、加工中の製品に欠陥が見つかったら、その製品を保留にしたり、リコールの範囲を稼働中の疑わしい製品のみに縮小したりすることができます。
以前はフォルダやファイル・キャビネットに保存されていた生産データは、eDHRに取り込まれ、オンラインで安全に解析できるため、プロセスの最適化に役立ちます。製造プロセスの各ステップで、データが収集され、仕様が実行されます。生産ダッシュボード、品質ダッシュボード、KPIにドリルダウンすることで、企業全体で即座に可視化できるため、包括的なトレーサビリティが確立します。
eDHRを使用して、製品の製造プロセスを続行する前に、すべてのデータが完全で、仕様を満たすようにしなければなりません。eDHRのこの「自己監査」機能により、さらに合理的なプロセスが可能になります。eDHRは、加工 (または製造) 中のレビューなど、サイクルタイムを長引かせる、付加価値を生まない多くの作業を排除することにより、製造パフォーマンスを改善します。また、eDHRは最終レビューとリリース (品質レビュー) のプロセスを大幅に短縮します。これにより、MD&D企業は製品をより迅速に顧客に提供できると同時に、低速な紙のDHRプロセスで発生する遅延への対策として組み込んでいたWIPやFGの在庫のバッファーを削減できます。
eDHRは、生産を実行し、詳細な品質データをリアルタイムで収集するためのプラットフォームを確立することにより、一貫した製品品質を保証します。多くの場合、eDHRに保存されている貴重な情報を使用してプロセスのパフォーマンスを解析することで、より効果的な実行、エンジニアリング、品質を実現した結果として、製品の品質が向上します。eDHRシステムが、歩留まり、スループット、不適合材料のレポートを作成するため、ユーザーは全体的な視点から品質を確認できます。リアルタイム情報へのアクセスは、グローバルに、いつでも、どこでも可能なため、ユーザーはこれを使用して、是正措置と予防措置 (CAPA) を実行する必要があるかどうかを判断できます。
MD&D企業にとってのeDHRシステムの利点
eDHRシステムは、収益を改善する、優先度の高い目標を達成するのに役立ちます。大手MD&D企業も新興MD&D企業のどちらも、eDHRの利点を享受できます。グローバルMD&D企業は、不適合を減らし、間接費を大幅に削減して節約するとともに、品質問題のリスクと件数を減らせたと報告しています。新興のMD&D企業は、より効果的な実行と、リアルタイムの情報・傾向の把握により、プロセスを素早く安定させています。合理化されたエンドツーエンドのプロセスにより、すべてのMD&D企業が、製品の納期を大幅に短縮しています。その結果、レビュー/リリースまでの期間、収益をあげるまでの期間も短縮し、四半期の収益が増加しています。